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CEOのバックグラウンドと経営スタイルの考察

CEOのバックグラウンドや嗜好性は、その企業のカルチャーや経営方針に大きな影響を及ぼすと思われる。

 

国内のベンチャー企業を例にとって考察してみる。

  

バックグラウンド

  • ①営業寄りか/エンジニア寄りか
  • ②学生起業に近いか/社会人経験が長いか 
  • ③エリートかどうか

  

  •  営業寄りか/エンジニア寄りか

なんとなく想像がつくと思うが、営業とエンジニアは人種が違うと言っても差し支えないくらい、価値観が異なる。

営業は、顧客のニーズに対して自社サービスを売り込むため、多少ニーズとずれていても口八丁でオーバートークしながら受注を挙げるスタイルが典型的である。

一方エンジニアは、なるべく運用の手間がかからないように効率化しながらスケールさせることを望み、完成度を高める職人気質な人が多い。

 

CEOが営業上がりの場合、一定属人的なトークで勝ちやすいビジネスが選択されることが多く、仕組みで解決したり効率化に対する意識が弱い企業が多い。結果としてプロダクトづくりやエンジニアリングを強みとする企業は少ないように思う。

 

サイバーエージェントが代表的であるが、藤田氏は営業出身であり、現在の事業としてはメディア事業や広告代理事業、ゲーム事業が中心である。子会社でアドテク系のプロダクトづくりをしている会社もあるが、業界トップのテクノロジー保有しているとは言い難く、広告代理事業も営業マンの質で勝っていると言える。

 

逆にCEOがエンジニア上がりの場合、ものづくりを重視し、属人性を排除してテクノロジーでスケールできる事業ドメインを選ぶ企業が多い。

 

メルカリが代表的であるが、山田氏はエンジニア出身であり、いくつかサービスを立ち上げたあと、メルカリを創業している。メルカリはエンジニアに対する待遇は極めて優れており、業界屈指の優秀なエンジニアを囲い込んでいる実態がある。アメリカやイギリスへの展開をしたように、属人性を排除したスケールするビジネスを好んでいると言える。これは決済領域の事業であるメルペイを見てもわかる。

 

なお、日本にはエンジニア上がりのCEOが少ない。そもそもエンジニア自体も少ないが、大企業が安定している(ように見える)日本においては、一発当ててのし上がろうとするギラギラしたタイプの起業家が多く、結果として営業など非エンジニア系のバックグラウンドに集中していることが原因に思われる。

 

  •  学生起業に近いか、社会人経験が長いか

学生起業の場合、特定の業界に対する専門知識を持ち合わせていないため、外からでも課題や勝ち筋が見えやすい業界が選ばれることが多い。メディア・ゲーム・人材などの領域がわかりやすい。そのドメインに対する愛や課題感が強いわけではなく、複数ドメインに渡って事業を展開していこうとするタイプの人もここに多い。

 

一方である程度社会人経験を積んでいる場合、特定業界に対する知見が深く、その領域での事業ドメインが中心となりうる一方で、そのドメイン外の事業を展開するケースは珍しい。よって着手した領域によっては一定規模以上に大きくならない可能性がある。

 

学生起業の代表例は、最年少で上場したリブセンスの村上氏や、ミドルベンチャーで就活生に人気のあるレバレジーズの岩槻氏などが有名であろう。リブセンスはマッハバイトという求人メディアを運営しており、レバレジーズもレバテックや介護のお仕事などバーティカル求人サイトを運営されている。さらに上の世代であれば、堀江貴文氏や、孫正義氏、リクルートの江副氏などが著名である。

 

社会人経験を積んでの起業家は多数いるが、ドメインごとにあげれば、金融ならマネーフォワード 辻氏(マネックス証券出身)、ZOO 冨田氏(野村證券出身)、広告業界ならフリークアウト 佐藤氏(Google出身)、fringe81 田中氏(ユナイテッド出身)などがあげられる。金融や広告に見られる通り、業界の知識が一定必要なドメインでの起業が多い。

 

  • エリートかどうか

やや炎上しそうな切り口ではあるが、いったんここでは学歴を指す。米国での著名な起業家はザッカーバーグを始め一流大学出身が目立ち、より豊かな社会の創造を目指したドメインやビジョン設定をする傾向があると思われる。一方で、エコノミックアニマルのような、儲かるから経営するような傾向も一部見られると思われる。一方で、非エリートなバックグラウンドでの起業の場合、エネルギッシュでワイルドなリーダーシップを取りながら泥臭く事業を進めるスタイルの起業家が多いと思われる。

 

エリート起業家の代表例といえば、DeNAの南場氏は津田塾大卒後、ハーバード大学MBAも取得した起業家である。ゲーム事業が売り上げ・利益の中核でありながら、ライフサイエンスやオートモーティブ領域、スポーツ領域での事業も抱えており、エリート好みの事業展開と言える。一方で、WELQ騒動が起きたように、サイトへの集客のために医療ドメインで根拠のない記事を量産したこともあった。

非エリート起業家の代表例といえば、今話題のZOZO前澤氏や、DMM社長の亀山市、ライザップ社長の瀬戸氏などが有名である。いずれも人たらしなキャラクターと大胆な経営で成功を収めているといえる。

 

 

以上のとおり、経営者のバックグラウンドによって、企業のカルチャーや事業ドメイン選定などは変わってくると言えそうだ。一概にどのタイプの人が良い悪いではなく、タイプによってスタイルが変わるというだけの話である。

ベンチャー企業に就職しようと思っている方は参考にして見てもいいかもしれない。